EEPMONが語るデジタルアートの世界
1月22日、カナダ大使館高円宮記念ギャラリーで、カナダ人アーティストEEPMONによる「EEPMON 展:デジタルアートが生み出す無限の世界」が開幕します。この展覧会では、人間の想像力とデジタル知性が交わる世界を、ジェネレーティブ・ アート(偶然性やインタラクションを取り入れたコンピュータプログラムによる作品)を通じて体験できます。EEPMONことエリック・チャンは、アートとコードを融合させ、文化やテクノロジーをつなぐダイナミックな作品を制作しています。STEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)の推進者であり、起業家として世界的なブランドとコラボレーションし、国内外のギャラリーや美術館で作品を発表してきました。EEPMONという名前は、彼が生まれた干支の「申年」にちなみ、「ape man(猿人)」を遊び心で再解釈したものです。彼はカナダ国立図書館・公文書館の初代クリエイター・イン・レジデンスに選ばれ、そのジェネレーティブ作品は2025年大阪・関西万博のカナダパビリオンにも展示されました(写真)。
このQ&AでEEPMONは、創作プロセス、文化的な影響、そしてアートの未来への期待について語ってくれました。
展覧会に来た人に、どんな体験をしてほしいですか?
私は、デジタル時代にどんな作品が生み出せるのか、その魅力を感じてほしいと思っています。デジタル技術は冷たいものでも、難しいものでもありません。むしろ、アートを広く開かれたものにし、印刷物やスクリーン、ファッション、大型壁画など、さまざまな分野で花開かせる力を持っています。デジタルアートには境界がなく、その無限の可能性こそが最大の魅力です。今は、想像力と協働次第で限りない創作ができる、とてもワクワクする時代です。
結局のところ、EEPMONという存在を知ってもらい、「多様性こそが表現の手段」であることを伝えたいです。マーシャル・マクルーハンの「メディアはメッセージである」という考えを踏まえ、私の作品は、デジタルアートそのものがメッセージになることを示しています。それは、流動性、つながり、異なる要素の融合によって形づくられる現代文化の姿です。デジタルの世界は、国境も枠もなく、分野や文化を超えて自由に協働できる、最も自由なアートの場なのです。
アーティストの中には、「生成AIは脅威だ」と言う人もいます。あなたはこれをどのように捉えて創作のパートナーとしているのでしょうか?
1800年代に写真が登場したときも同じ議論がありました。絵画と写真はライバル関係にありましたが、やがて写真は芸術として認められ、創造性を豊かにする存在になりました。今では、その価値を疑う人はいません。カメラや絵筆は、クリエイターのビジョンを広げるための道具にすぎません。
生成AIも同じです。これは「道具」であり、しかもとてもワクワクするものです。アーティストはAIを使ってコード作品を発展させることができ、プログラマーは大胆なビジュアルを生み出せます。さらに、アーティストでもプログラマーでもない人が、新しい創作の世界を探求することもできます。AIは、壁を低くし、好奇心を刺激し、分野やスキルを超えた協働を可能にする「平等化をもたらす大きな力」なのです。
あなたの作品には、ご自身のルーツや世界的な影響が反映されています。日本から受けた影響は何ですか?そして、あなたのアートはカナダ、日本、そしてその先をどのようにつないでいるのでしょうか?
私はオタワで生まれ育ったので、自分のアジアのルーツとつながりたいという思いがありました。トロントのいとこを訪ねたとき、任天堂のファミコンに出会い、その色彩とインタラクティブ性に魅了されました。スーパーマリオブラザーズをプレーすることは、新しいデジタル世界に足を踏み入れるような体験でした。
さらに、『らんま1/2』、『バブルガムクライシス』、『攻殻機動隊』といったクラシックなアニメは、日本の驚くべきクリエイティブ産業を私に教えてくれました。ゲームやアニメ文化と、ハイファッション、建築、そして「侘び寂び」の哲学が共存する日本の姿は、今も私を刺激し続けています。
渋谷、新宿、銀座の光り輝く街並みは、現代の日本を象徴しています。ひとつひとつの看板はただのビジネスサインですが、全体ではネオンの流れがモザイクのように繋がり、色彩と希望に満ちた光景を作り出しています。私はそのエネルギーを「CityLights」シリーズに込め、都市の輝きを称えています。
中国系カナダ人という「世界のハイブリッド」であることが、私に自然な柔軟性や、異なる世界を行き来する感覚、そして可能性に満ちた視点を与えてくれたのかもしれません。そのワクワク感、驚き、探求心は、さまざまなメディアを通して私の作品に流れ込んでいます。カナダで育ったことで、どんな形でも「受け入れられる」流動性が養われたと思います。それが私の創造の世界をカナダ、日本、そしてその先へとつなぐ力になっています。高円宮記念ギャラリーでこれらの世界を紹介できることを心から光栄に思い、楽しみにしています。
ジェネレーティブ・アートの未来に、どんなワクワクする可能性を感じていますか?
ジェネレーティブ・アートには限界がありません。データやコードは、私にとって無限のカラーパレットのようなものです。そこから生まれる作品は、刺激的で、驚きに満ち、時には予想外で、パフォーマンス性さえ持っています。
カールトン大学で学んでいたとき、日本の前衛美術集団「具体」と、その創設者である吉原治良の宣言に出会いました。そこには「物質が自らの特性を示すとき、美が生まれる」という考えがありました。この講義を担当していたのは、後にニューヨークのグッゲンハイム美術館で画期的な展覧会「Gutai: Splendid Playground」(2013年)を共同キュレーションしたミン・ティアンポ教授です。 精神と物質のどちらかが支配するのではなく、両者が調和して共存する ― この哲学は私を強く刺激しました。データ、コード、そして芸術的な意図が共に生きるバランスを創り出す、それが私の目指すところです。
私の作品には静止しているものもあれば、動いているものもあり、また季節やリズムに合わせて変化するものもあります。コード、創造性、イノベーションが交わる「遊び場」で、私はアイデアを探求し、火花を散らします。そして、これはまだ始まりにすぎません。 |